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2014年05月24日

ミラクルジャンプ読み切り アマリリス 感想 福島鉄平先生の凱旋


まず、ミラクルジャンプは少年誌ではありません。
そして月刊誌で、定価450円です。


ビジネスもグランドもサイキョーも、
スクエアでさえ買わない私は、
当然、普段はこの雑誌を買いません。
というかその存在を初めて知ったくらいです。


どんな漫画が連載しているのかも知りませんし、
知っても気にも留めないでしょう。

それでも私は、ある読み切りを読むがために、
それだけのためにこの雑誌を初めて買いました。



少年ジャンプで連載された異色の漫画、
「サムライうさぎ」。

サムライうさぎ 1 (ジャンプコミックス)





バトルをしない江戸時代の物語で、
人情や愛情など、人の心の性根を、
丁寧に描いた心温まる物語です。
(バトル路線にしようとか宣ったのが編集者だったら、
 ◯◯すればいいのにとイケナイ波動に包まれるほどの傑作です)


描いたのは福島鉄兵先生。
その方の新作を、今か今かと、
ずーっと待っておりました。

そして今日、遂にミラクルジャンプを購入。

各所で話題に上がる傑作という触れ込み以前に、
私は少年ジャンプの広告を見て、
買おうと心に決めていました。



読み切り連載ですので、
オムニバスか、それとも丸切り設定を変える、
星新一路線なのかは未だわかりません。
それでもしばらくはこの方の作品を読むことが出来る。
今はそれで十分です。

さて、早速ですがアマリリスの感想に参ります。





表紙のカラーを見れば、
可愛い子がソファに寄りかかって眠っている。

飴も鏡も花もティーポットもお菓子もある、
とても素敵なお部屋。

……に、見えたんです。

物語を一巡してもう一度見ると、
散らばったお金やボトルのお酒など、
ファンシーで可愛らしい部屋には似つかわしくない物が。


この表紙1枚、たった1枚の中に、
この物語の伝えたいメッセージが、
全て集約されているのです。




ジャン=レクレール(11)は、
将来皆を引っ張って立つような、
そんな好青年になれるであろう少年です。
小学生時代に彼みたいな子がいたら、
クラスの人気者になったことでしょう。


そんな少年を襲う悲劇は、
自身の母による借金が原因で訪れました。

借金のかたに連行されたジャンは、
【AMARYLLIS】という店に身売りされます。

用意された愛らしい服に着替えることは、
男娼として働くことを意味しています。

酒を注いだり話を聞いたり歌を歌ったり。
煙草臭く酒気臭い場所で、
世間ではキラキラしている大人もここでは汚かったり、
嫌なことしかない場所。

そんな「きたない」仕事をする内に、
彼は皆のことを綺麗でキラキラとして見えて、
自分のことは反対に汚れてきたないと考えます。


自己嫌悪に葛藤し、
時には涙を流しているジャンに、
ポール=マッセという少年が接近します。

彼と出会ってから、
少しずつ居場所を作っていって。
自分が行くべき場所が増えて。

でも純粋でキラキラしていて、
嫌われたくもないけど汚したくもなく、
でも自分はきたないからこれ以上一緒にいてはいけない、
でもでも一緒にいたい、嫌われたくない。


だから彼は、日の当たるきれいな場所で、
ジャンはきたない、自分の世界へ。


与えられた世界へ帰っていく。





私の感想としてはもう、

最高でした。




450円でこの漫画を買ったことを、
たった45ページの漫画だけを目的に買ったことを、
微塵も後悔はしていません。


むしろこんなレベルの高い、
高水準でまとまりのある読み切りを、
確実に月一で読めるのであれば、
喜んで買います。

ジャンの心理描写がもう痛々しいほど、
ぎゅっとしめつけられるほど、
胸に食い込んできます。

並の漫画家であれば、
男娼と媚を混ぜわせて、
よくある一般的なお色気路線に、
持って行こうとするのが自然です。


よくあるコメディにしたり、
よくある経営ビジネスな話にしたり。
むしろ男じゃなく女の子にして、
あんなことこんなことが出来ると、
そういう考えの方もいると思います。


福島鉄平先生はそうではなく、
真正面からこの作品、作品世界観、
キャラクターの細部に至るまで、
批判を受けるであろう要素をふんだんに入れても、
真摯に向き合ったことでこの作品が生まれたんだと思います。



テレビにもオネェが出ます。
腐女子はBLをたしなみます。
私は百合をたしなみます。
同性同士での恋愛は、
日本においては他国と比べて遥かにおおらかです。
最近北の雪国ではそういうの厳しいから、
この漫画は間違いなく発禁処分を受けるでしょう。

多くの人がこの漫画を知らないまま終わるのが、
たまらなく口惜しい。
同性同士でも、こういう綺麗な物語が出来るのに。

偏見を抜きにして読んで欲しい。
同性愛が気持ち悪いとか、
そういう固定概念抜きにして、
この漫画を読んで欲しい。


悲恋ではない。
恋愛ではなくこれはただの友情物語なんですから。

その先に待っていたあの展開は、
突っぱねてしまいたいという、
ジャンなりの決別方法なんですから。

最後のページの、「僕はもう」からの、
独白が……もう、切なくてね……。



表紙のお酒とお金。
よく見なければ見落としてしまいがちな、
本当にさり気ない配置です。

「きたないところを見せたくない」という、
ジャンの心情の現れだと思うんです。

そしてこの部屋の中も、
酒気かヤニの臭いがするのです。

手前ではなく奥にあるサッカーボールは、
気持ちを奥底にしまうという、
ラストへの暗示でしょう。



何も知らない読者は、
表紙のジャンをきたないとは思いません。
むしろ可愛いとさえ思うはずです。

しかし一度読んだ後、
ジャンを可愛いと思うことすらも、
それは彼に対する批難か何かになってしまう。
彼はその姿を良しとしていないのですから。


最後の決断。
至るまでの過程。
見事に描かれた心理描写は、
きっと読み手を満足させます。


生まれる感情が気持ち悪いでも、
愛おしいでもなんでもいいです。

受け手によってこの漫画の評価はまっぷたつでしょうから。


いつかジャンに救いの手が伸びることを、
切に、切に願っています。

posted by ずばのろ at 19:10| Comment(0) | ジャンプ読み切り作品 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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