グッと来た……
もうなんというか、心鷲掴みにされた。
もうなんというか、心鷲掴みにされた。
正直絵は簡素で、背景も白率が圧倒時に多い。
やる気あるのかわからない簡単作画で、主人公2人にはトーンすらない。
だが。この作品の雰囲気である空虚さ、漠然とした寂寥感、唐突にぶち込まれるギャグの全て。
その全部に合致したこれ以上ない作画に変化している。
あらすじなどここで書くのは野暮だから是非とも読んで欲しい。
読んだらまた感想記事を読んでもらえたら嬉しいです。
※以下ネタバレ
1:幽霊の正体
幽霊の正体に関することは実名以外明かされません。
ですがいたずらの度合いや、雪合戦に無邪気になる様を見れば、まだ年幼い頃に死んでしまったことがうかがえます。
その割にツッコミのキレがいいのは長らく幽霊していたからでしょう。
筋としては何らかの病で自宅療養中に急死。両親は悲しみで家を引き払い。
思い入れのある家に地縛霊として残っていた。という感じでしょうか。
死んだ経緯については謎だらけですが、30ページの中に入れるにはウェイトが重いので削って正解だと思います。
2:ギャグの緩急
クマのぬいぐるみをあげて、その直後にうめき声をあげる主人公。
一瞬幽霊が泣くシーンかと勘違いする落差から、「医者呼ぶと金かかる」「電話繋がらない」という怒涛のギャグ展開。
しんみりムードの印象はそのままに、ギャグ方向へと軌道修正する演出が見事に神がかっていました。
雪合戦に持って行く流れもその落ちもいいです。
3:タチバナさんは何者か?
作中。特に労働している描写がないタチバナさんですが、豪邸を建てる金を貯める経済力があります。
単なるアルバイトやサラリーマンでは、この若さで豪邸を建てるのは無理でしょう。
住宅ローンなどタチバナさんの性格からして組みそうにないですし。スーツなんか着るはずもなさそうですし。
実は彼の職業を匂わせる描写があるのが雪合戦。造詣の深い建築物のミニチュアを雪で再現するという芸術性。
建築に携わる者か、芸術家系統の人間だと想像できます。
そんな重要なシーンをギャグでさらりと流すのはこの漫画の凄いところです。
(深読みかもしれませんが)
4:あったかい1コマを大ゴマに持ってくる
真実を告げる一コマに込められたタチバナさんの本当の想い。
そこから続く会話。
今までは小さいコマに描かれていた家が1P丸々に描かれたことで沸き立つ物語の終焉。
夜色の家から旅立ちの描写。扉を徐々に閉めていく、徐々に遠ざかる影、
しかし6コマある扉閉めのシーンは、3コマほど動かない。
ドアに頭を寄せたタチバナさんのドアップで、その不動の意味を知り、別れの言葉と共に扉はしまって物語は終わる。
そして手に入れたもの、失ったものの大きさが込められた見開き。
この流れ……!!
完璧です!!!!
多くは語らず、しかし雄弁に語りかける所作と描写。漫画の醍醐味をこれでもかと詰め込んだ傑作です!!
作者名はカタカナ四文字で「カワサキ先生」!
この破格の読み切りを読まずに今週号のジャンプは語れない!!!
画力だけが面白さを決めるわけではないことを証明した、渾身の一作を、1人でも多くの人に見て欲しい!!
ラベル:ジャンプ読み切り